ひまわり信託ニュース
2015年1月24日 | 「後見」を知らない遺言の怖さ 老境の資産変動への注意の必要性とは
「後見」を知らない遺言の怖さ 老境の資産変動への注意の必要性とは
今日は土曜日でしたが,私は都立松沢病院に診断書を取りに行きました。
現在後見人をお受けしている方の関係で必要になったものです。
松沢病院にうかがうのは久しぶりで,いつのまにか病院がピカピカになっていました。
さて,「『成年後見制度』を知って欲しい」のエントリでちらっと書きましたが,後見のことを知らないで遺言を書くと大変なことになる場合があります。
あるお年寄りが,ふたりの子どもに,A銀行の預金は長男に,B銀行の預金は次男にという遺言を書いたとします。
その後その方が認知症になり,老人ホームに入ることになった。
後見人は遺言のことは知らずにA銀行の預金を解約して入居金に充てた。
その後本人が亡くなったら・・・
長男に行くはずのA銀行の預金がなくなってしまっているのです。
このようなことにならないように,全部の預金をまとめてから分け方の割合を指定する遺言にするとか,解約があったときには別の分け方をするとか,ちゃんと予想をしておけば遺言書の中味で対処しておく方法はあります。
それを何も考えずに,素朴なお年寄りのいうとおりに遺言書を作ってしまう自称専門家が,まだ見受けられます。
ご本人が気づかない落とし穴を見つけてアドバイスするのが専門家の仕事です。
この前提として,お年寄りが人生をまっとうするまでに,どのようなことがあるのか,どういうお金が必要となるのか,を知らないでは予想も立ちません。
成年後見の仕事をしていると,そのような常識は自ずと身につきます。
「成年後見を知って欲しい」と,特に専門家に訴えたい理由がここにあります。
(文責:伊東大祐)
付記
コメント欄に自己レスで補足したのですが,アメブロはコメントが常時表示にはならないようですので,記事本体に付記します。
1. 自己レスですが,補足します
遺言を書いた後,ご自身が預金解約などを行えば,民法1023条2項により,その部分を撤回したと解釈されます。
しかし,ご自身でなく,事情を知らない成年後見人が解約してしまったときについては,この条文を適用すべき場合ではないとも考えられます。
とはいうものの,1023条2項が適用されなくても,ご長男に相続させるべき預金がない場合に,この遺言をどう解釈するかという難しい問題が残る訳で,遺言者の意を汲んで長男にも遺産がいくような解釈をする余地がゼロではないと思うものの,そのような難しい状況になること自体が大変な問題でしょう。
この問題,判例等がないか,私も再度調べてみます。