ひまわり信託ニュース
2015年1月22日 | 「成年後見制度」を知って欲しい
「成年後見制度」を知って欲しい
今回は信託とは少し違う話をします。
「成年後見制度」というものをご存じでしょうか。
認知症のお年寄りなどの財産を守るための制度です。
自分で自分の財産を管理できなくなった人については,以前は「禁治産」「準禁治産」という制度がありました。
「禁治産」というのは「財産を治めることを禁止する」という意味で,そのような困難に至った人に対する温かい気持ちもなく,おまえからは財産の管理を取り上げる!というもので,資産家の当主などが財産管理能力がないような場合に,まわりの人がその利害でやむなくその制度を活用するような,暗い雰囲気に充ち満ちた制度でした。
これがいけないということで,平成12年に法制度が大改正され,禁治産等の制度はなくなり,かわって「成年後見制度」がスタートしたのです。
私もその当初から,これこそ待っていた制度だと思い,成年後見や保佐の申し立て,成年後見人や保佐人などの活動を行ってきました。
後見制度は,その後もいろいろな困難に直面しつつ,国民の間に定着し,着実に成果を上げていると思います。
しかし,まだ残された課題は多くあります。
制度運営上の誤解に基づく反発などもあります。
これらは乗り越えていかなければならない課題です。
制度を否定するのではなく,しかし軋轢のある問題から目を逸らさないことが求められています。
突然このような話を書いたのは,今日私は,東京都某区の社会福祉協議会が熱心に行っているある会合に参加したからです。
成年後見に携わる法律・福祉の専門家の集まりで,貴重な経験について意見交換をするのですが,社会福祉協議会の熱意により,どんどん参加する専門家の数が増え,その熱気もますます盛んになっているのです。
相続を考える際,人は必ず成年後見のお世話になることを忘れてはなりません。
人生の最後の段階で,人の財産関係も,人間関係も,大きな変化があることがあります。
それを知らないで,それを無視して行う相続についてのアドバイスは,無責任というのを超えて,害悪ですらある可能性があります。
ですから私は,弁護士の後輩にも,相続についてのアドバイスをするなら,成年後見も知ること,少なくともそれを知らないで安直なアドバイスをしないこと,を口を酸っぱくして説いています。
お年寄りについての,介護保険やその他の社会制度,有料老人ホームというのはどういう世界か等の知識は必須です。
お年寄りの介護について不幸にして起こることのある,親族間の法的な争いについても知らないでは済まされません。
幸いにそのような心配が全くないケースについては,弁護士以外の方々のソリューションも十分活用できると思います。
残念ながらそうとも言い切れない場合には,弁護士の意見も聴いていただければと思います。
まあ,われわれ弁護士の心配は,うまくいけば杞憂に終わることもあります。そうならないときが深刻なのです。
(文責:伊東大祐)