ひまわり信託ニュース
2015年1月26日 | 信託でなくてはできないこと 「後継ぎ遺贈」とは 続4
信託でなくてはできないこと 「後継ぎ遺贈」とは 続4
後継ぎ遺贈型受益者連続信託の注意点 その1
これから何回かに分けて,後継ぎ遺贈型受益者連続信託の注意点について述べていこうと思います。
とりあえず目次です。
1 状況の変化を見落とすな
2 「受託者」はどうするか
3 相続税の課税関係
4 「負担付遺贈」は使えるか
では,参ります。
1 状況の変化を見落とすな
・・・相続問題を扱う上での状況変化への目配りとは
花子さんは終生自宅に住めて,その後はタカシさんに。
信託を使えば驚くほど上手くいく。
じゃあ,早速そういう信託契約をするか・・・
しかし,現実はそんなに簡単ではありません。
「成年後見を知ってほしい」「『後見』を知らない遺言の怖さ」のエントリでも触れましたが,お年を召した方の状況は刻々変化します。
太郎さんは十分な厚生年金があり,太郎さんが他界したあと花子さんも遺族年金で暮らしはなんとかなっていたとします。
しかし,タカシさんの遺留分のために預金は渡してしまって,手許にまとまったお金がない。
そこで花子さんが,ご自宅では暮らせないような,要介護の状態になってしまったらどうしましょう。
花子さんの「受益権」は自宅に住むだけ。
受託者は住まわせる以上のことはできない。
特別養護老人ホームなんて何百人待ちでいつになったら入れるか分からない。
有料老人ホームもいろいろな選択肢は増えたが,当初入居金なしで,毎月の年金だけで入れるところはそうそうない・・・
こういう事態を考えると,いざというときにはタカシさんには済まないが,場合によっては自宅を売ることもあるような信託にしておく必要もあるかも知れない。
それ以前に,タカシさんに渡した預金の額が妥当だったのか,タカシさんに花子さんの老後のことも相談して,ほどよい線引きをしておいたほうがよかったのではないか・・・
いろいろ悔やまれることが出てきます。
これは,「将来の変化」ということについて,よく考えずに「信託」というイメージに飛びついてしまったことが原因です。
信託だから何でも解決してくれるわけではありません。
いろいろな変化を見据えた,冷静な配慮が必要ですし,難しい問題については太郎さんがあらかじめ決断しておく(花子さんの老後の安泰を最優先するのか,ガマンしてもらうのか,など)ことが必要なのです。
信託は,物事を解決する器に過ぎません。
かつてないことを実現できる器ですが,それを使いこなす温かいハートと,冷静な頭脳が必要なのです。
(文責:伊東大祐)