ひまわり信託ニュース
2015年2月2日 | 相続税と養子縁組・・・基礎控除とばしにご用心
相続税と養子縁組・・・基礎控除とばしにご用心
相続税と養子縁組・・・基礎控除とばしにご用心
相続税には基礎控除という制度がある。
昨年までは5,000万円+法定相続人1人につき1,000万円。
これが今年から3,000万円+法定相続人1人につき600万円に減った。
すなわち,増税である。
その昔,養子をとって相続人を増やせばこの基礎控除がその分増えるという節税法がはやったことがあった。
しかし,相続税のために名目的に養子を取るのも健全なことではない。養子縁組をすれば法律関係がそれに従っていろいろ変動する。
後に,税法が変わり,このような節税策は,実効性をぐっと縮められた。
節税のための不健全な養子縁組はあまりみかけなくなった。
では,次のような場合はどうだろうか。
Aさんは,男性・80歳。40歳のときに交通事故で妻と子を失って以来,独身を貫いてきたが,15年前,家政婦をしてくれていたBさん(当時40歳)と再婚した。Bさんには死別した夫との間の一人息子C君(当時16歳)がいた。
C君はAさんに反発した訳ではなかったが,自分の父は亡くなった実のお父さんだという気持ちが強く,Aさんとは養子縁組をしなかった。
Aさんの親御さんは子だくさんで,弟が3人,妹が3人いる。
最近Aさんは,もし自分が亡くなれば,相続人はBさんと弟妹になるということを知った。
妻であるBさんは,相続権は4分の3はあるということだが,弟妹に4分の1払うのは納得がいかない。長男といっても何も相続したものはないし,むしろ長男として弟妹の世話をした立場だからだ。
ところが,知人から,じゃあC君を養子にすればいいじゃないか,そうしたら弟妹は相続人じゃなくなるんだから,と言われた。
それは好都合だ,C君もお母さんのためなら養子縁組をしてくれるだろう。それがいい・・・
Aさんの資産は6,000万円ある。
知人のアドバイスは正しいか。
正解は,養子縁組はせず,Aさんが遺言をすること,である。
AさんがCさんと養子縁組をする。法定相続人はBさん・Cさんの2名。
相続税の基礎控除は,3,000万円+600万円×2=4,200万円。
遺産はこれより大きいから相続税が発生する。
相続税の総額は180万円。
養子縁組はせずに,遺言を書く。内容は,弟妹には相続させず,Bさんに全部相続させるとする。
遺言で相続分がなくても,弟妹は法定相続人であるので,
相続税の基礎控除は,3,000万円+600万円×7=7,200万円。
遺産はこれより少ないから,相続税はかからない。
兄弟姉妹には遺留分もないので,遺言に不服は言えない。
相続税の節税のためにするのでない養子縁組でも,そんなことしなくても目的が実現できるものもある。
兄弟相続への対処は遺言を書けば足りる。
そのために養子縁組までしてしまうのは,やり過ぎである。
その結果,相続税というおまけまでついてくる。
リーガルの知識なくして相続のアドバイスをすべきでないが,税務の知識もなくては無責任というべきである。