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2015年2月4日 | 養子と相続税基礎控除の関係について ほか のまとめ

養子と相続税基礎控除の関係について ほか のまとめ

2月2日に養子と基礎控除関係を題材にした記事が上がりましたが,この関係の法律をおさらいしておきたいと思います。

関係するのは相続税法15条,これの第2項以下の規定です。

どんどん養子を取れば基礎控除が増えることに手が打たれたのですが,現在の法律の規定は次のとおりです。

(遺産に係る基礎控除)
第十五条  相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。
2  前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章 (相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
一  当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人
二  当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人

・・・実~に,わかりにくいですね。

「一」「二」というのは,「号」というのですけど,一号も二号もカッコの中の「次の各号」というのを受けて書いてあります。
一号だけ読むと,「実子がある場合は一人って,子どもが何人もいても基礎控除は3600万までなの?」とか勘違いしそうになりますが,「実の子がいらっしゃるときは,あと一人だけ養子を基礎控除の計算に加えますよ」ってことです。
例えば,一人娘さんに婿養子を取って家を継いでもらう,というときに,婿養子さんは基礎控除600万を稼げないとなるとメンツ丸つぶれですからそれは入れますよ,でもそれ以上養子をとっても節税としか考えられないから,税務署は認めません,ということなのです。

節税じゃない養子ももちろんあると思いますが,それをいちいち区別できないのでこういう線引きをしてしまう,ということです。

「当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人」というのはじゃあ何故と言えば,実のお子さんがないので養子を取って実子同様継いでもらうのは何も不自然じゃないことですが,そもそも養子があるときは「各号」って言っちゃったので,当然と思われるこの状態も,ちゃんと「各号」に書かなければならないわけです。

じゃあ,二号は?

実子がいるときはあと一人まではOKというのが法律の考えですから,実子がいなければ一人じゃ可哀想じゃない?ということで,実子がいないときは2人まで,となっているわけです。

これを厳密に整理し直すと,こういう条文になってしまうのですが,このような「書いてあることを組み立て直さないと意味が分かりにくい法律」が,戦後は増えているように思います。

明治時代に作られた法律などが,原則例外の割り振りなどでその法律の考え方がスッと入ってくる(これは作った人が天才だったんだと正直思います。)のに比べ,形式的には厳密なのだけど,かえってわかりにくい法律が,最近になればなるほど増えている感じがします。日本人が劣化している・・・

オマケになりますが,相続税の基礎控除の関係で,基本的なQAをいくつか。

Q:相続放棄をする人がいるんだけど,その分基礎控除減っちゃうの?
A:NO
相続税法15条2項のカッコの中に「相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする」と書いてあります。

Q:えっ?放棄したらウチに子どもが3人いるから基礎控除も増えると思ったのにダメなの?
A:そもそも放棄しても,代襲相続にはならないので,あなたの子どもは相続人じゃないのです。

Q:実子同様だと思って特別養子縁組したのに,やっぱり養子は冷遇されるの?
A:違います。
相続税法15条3項
3  前項の規定の適用については、次に掲げる者は実子とみなす。
一  民法第八百十七条の二第一項 (特別養子縁組の成立)に規定する特別養子縁組による養子となつた者、当該被相続人の配偶者の実子で当該被相続人の養子となつた者その他これらに準ずる者として政令で定める者
連れ子養子も実子とみなされています。

Q:逆縁で父より先に亡くなった兄のところには3人子どもがいるんだけど,その分基礎控除は増えるの?それって,その甥姪が遺産分けで有利になるの?
A:基礎控除は増えます。でも,それで遺産分割上有利な扱いをすることはありません。
相続税法15条3項
二  実子若しくは養子又はその直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため民法第五編第二章 の規定による相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)となつたその者の直系卑属

お兄さんのお子さん3人は「実子(お兄さん)・・・が相続開始以前に死亡し・・・たため民法第五編第二章 の規定による相続人・・・となつたその者の直系卑属」に該当し,実子とみなされますから,その分基礎控除は増えます。しかし,相続税がそのおかげで減ったからといって,その分相続で優遇される仕組にはなっていません。